心のイメージング力が高い人は何をもたらすか
私が大切にしていることの一つに、「心のイメージング」というのがあります。
心のイメージングとは、相手が今どんな気持ちになっているのかを敏感に察知して、相手を気遣った行動や言葉掛けができる力のこと。
心のイメージング力が高い方と出会うと、とてもうれしくなります。
先日もそんな方との出会いがありました。
その日私は、出張先に向かうために新幹線に乗っていました。その日の車内は、乗客がまばらでかなり空いていました。
ところがなぜか私のすぐ隣の座席に、お客さんが一人座っています。周りの席はがらがらなのにもかかわらずです。
「なんだか落ち着かないぞ。できれば空いているほかの席に移動したいな……」と、私は心の中でつぶやいていました。
そこにやってきたのが、パーサーの女性でした。パーサーは私が差し出した乗車券を確認した後に、こう言いました。
「もしよろしければ、ほかの座席の空き状況を確認して、空いている席がありましたら移動の手配をいたしましょうか」と。ちなみに私は、「座席を変わりたい」なんてひと言も言っていません。
けれどもパーサーは居心地悪そうにしている私の顔色を見て、「空席の確認をしましょうか」と彼女の方から言い出してくれたのです。「このパーサーは、心のイメージング力が高い人だな」と私はすっかり感心しました。
ただし話はこれだけでは終わりません。
新幹線が目的地に到着する30分ぐらい前になったとき、私は急にコーヒーが飲みたくなりました。そこにやってきたのが、先ほどのパーサーの女性でした。私は彼女に質問しました。
「すいません。ワゴンサービスはすぐに来ますかね?」
「そうですね……、この車両に巡回してくるまでには、しばらく時間がかかると思います。ちなみにお客さまは何をお求めですか」
「ホットコーヒーがほしいんですが……」
すると彼女は「かしこまりました」と言ってその場を離れ、しばらくするとなんとコーヒーを持ってきてくれたのです。
「コーヒーが飲みたいんだけど、時間がない……」という私の心の動きを、敏感に察知してくれたわけです。
私は彼女のイメージング力の高さに、感心を超えてちょっと感動してしまいました。彼女のおかげで、新幹線の移動時間がとても快適なものになりました。
そう、
のです。
心のイメージング力は研修でも・・・
もちろん私は、自分自身も普段から「イメージング力の高い人間でありたい」と思っています。研修の場面でも、できる限りイメージング力を働かせるように心がけています。
けれども心がけてはいるつもりでも、本当に働かせることができているかは自分ではなかなかわからないものです。
そんななかで私は先日、あるクライアント企業の研修担当の方から、とてもありがたい言葉をいただきました。
その担当者は私に、「西野さんは受講生の心の機微を敏感にとらえて、コメントや言葉掛けをされてらっしゃいますね。そういうことができる講師はなかなかいらっしゃいませんよ」とおっしゃってくださったのです。
私にとっては最高の褒め言葉であり、自信を持たせてくれる言葉でした。
ちなみにその企業で私が担当している研修は、経営幹部層を対象とした「リーダーシップ研修」です。私の研修では、受講生同士がお互いの優れた点と改善点を指摘し合うフィードバックのワークを重視しているのですが、リーダーシップ研修の中にもフィードバックを取り入れています。もちろん私自身も受講生に対してフィードバックを行います。
実はリーダーシップ研修において受講生にフィードバックをするというのは、講師の力量がかなり問われることです。
受講生は豊富なビジネス経験を持っており、これまで数々の実績を上げてきた方々ばかりです。
その点に十分な敬意を払いつつ、改善すべき点はズバッと指摘しなくてはいけません。彼らのプライドを傷つけたり反感を持たせることなく、こちらのフィードバックを受け入れてもらえるための、細かい気遣いや言葉遣いが不可欠となります。まさに究極のイメージング力が求められるといえます。
だからこそ私は担当者の方から「西野さんは受講生の心の機微を敏感にとらえて、コメントや言葉掛けをされてらっしゃいますね」という褒め言葉がとてもうれしかったわけです。
とはいえ、これで満足してはいけません。まだまだ私は、自分のイメージング力を伸ばすことができると思っています。
相手の心の動きを敏感に感じ取り、その都度適切な言動がとれるように、これからも心のセンサーを磨き続けていくつもりです。